脇野町のこぎり
歴史・沿革
旧三島町脇野町に伝わるのこぎりの製造は、天保13年(1842年頃)会津若松から中屋庄兵衛が県下ではじめて開業したことを発端としている。「油焼入れ」という新技法を導入し、それを広く公開し現在の両刃のこぎり製造技術の礎となった。
明治から昭和30年代にかけての木製品全盛の時代には、産地に延べ60軒以上の製造元があったが、現在は使い捨て片刃の量産品などの台頭から、中屋庄兵衛の技法を伝える製造元は1軒となっている。
近年、プロユースのものから建築技術習得のためのツールとしてなど、その良さが見直されている。
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製品の特長・用途
産地の特産となっている両刃のこぎりは、炭素量の多い高級鋼を使用している。補強を付けない鋼の断面に凹凸を施した両刃のこぎりは、ひずみ取りの処理に非常に高度な技術が要求される反面、厚さの均一な使い捨て片刃とは異なる切れ味がある。また、焼き戻した鋼は適度な粘りがあり、曲面の切断にも柔軟に対応するしなやかさを持っている。
現在は、他の伝統工芸産地の工芸品の製作に欠かせない超小型クラフトのこぎりの製造を全国で一手に引き受けるなど、ユーザーの用途に合った製品も生産している。
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製造工程
型切り→焼き入れ(800度)→焼き戻し(340度)→ひずみ取り→仕上げ研磨→目立て・アサリ出し→銘切り
※大まかな工程を掲載しています。
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主な製品
産地の現場から「ひとこと」
「現在ののこぎりの市場は、使い捨ての片刃のこぎりが約30年前より主流を占めています。現在、両刃のこぎりの産地は1軒となっていますが、使い捨てではなく、何度も目立て処理を行うことができる両刃のこぎりは、切った時に下がりが良いため作業が楽で環境負荷も少なく、今ではその良さが見直されています。また、両刃のこぎりの良さを残した価格をおさえた新製品の開発も続けており、職人の方から一般の方にも広く購入できる鋸となっています。
(中長鋸製販 東 賢一郎)
産地イベントなど